The Defect 欠損部の治療

4.歯周病の治療

歯周病の治療は基本的に、口腔内を歯垢や歯石のない衛生的な状態に保つ事が第一です。
つまり、歯科医院に定期的に通って歯石取りやクリーニングをしても、毎日の歯磨きをおろそかにしてしまっては、歯周病の改善や予防はできません。
また、歯垢は歯磨きで取れますが、バイオフィルムや歯石は歯磨きでは取れないので、定期的に歯科医院で歯石取りをしてもらう必要があります。
つまり、歯周病の予防・治療には歯科医院での歯石取り・クリーニングと、家庭で行う歯磨き(セルフケア)の両方が重要です。



◎セルフケア(歯磨き)

歯周病の予防・改善の第一歩は、歯磨きでのプラークコントロールです。
プラークコントロールとは歯垢(プラーク)を除去して減少させることです。
食べたら磨くという習慣をつけましょう。

歯磨きの基本としては以下の事が大切です。

  • 時間をかけて磨く。(夜は5 分以上、時間があるときは15 分位磨きましょう。)
  • 歯ブラシの圧は、力を入れず優しく磨く。
  • 歯ブラシを動かすストロークは、細かく磨く。

また、歯周病の原因となりやすい歯垢のたまりやすく磨きにくい部位としては

  • 歯と歯肉の境目(歯肉溝、歯周ポケット)
  • 歯と歯の間

があります。


●歯と歯肉の境目

歯と歯肉の境目 斜め45度で歯ブラシを当てる

歯と歯肉の境目の所は、歯ブラシを歯に対して45°に向けて細かく優しく磨きます。
毛先を歯周ポケットの中に入れていくように磨きます。


●歯と歯の間

歯と歯の間 フロスを使う
フロスを使う

歯と歯の間には、フロス(糸ようじ)や、歯間ブラシを使うと効果的です。


◎歯科医院での歯周病治療

状態のチェック、検査を行い、自分の歯周病の状態・程度を理解・把握する。

ポケットの深さを測定するポケット検査やレントゲンによる検査を行います。
歯周病は症状の出にくい病気のため、検査をして自分の正確な状態を知りましょう。

歯周病の状態を見る
正しい歯磨きの方法を教えてもらう。

歯磨きの正しい方法は、歯並びなどにも関わりますので人それぞれです。
歯科医や歯科衛生士に自分に合った正しい歯磨きの方法を教わりましょう。

正しい磨き方を教わる
歯科医師や衛生士による専門的なクリーニング

歯周ポケットの中にたまってしまった歯垢や、歯垢が石灰化して硬くなってしまった歯石は歯磨きでは取り除くことはできず、歯科医師や衛生士による専門的なクリーニングによって取らなくてはなりません。
この歯垢や歯石を取り除くことをスケーリングといいます。
また、スケーリングの後に、歯根表面の汚染された歯質を除去し、表面を滑沢にすることで歯垢や歯石が再び付着しにくくすることをルートプレーニングといいます。
これらを合わせてスケーリング・ルートプレーニング(SRP)といいます。

専門的なクリーニング

●スケーリング

スケーリングには歯肉縁上スケーリングと歯肉縁下スケーリングとに分けられます。

・歯肉縁上スケーリング

通常、縁上スケーリングといい、歯肉縁より上の歯石や歯垢を取り除くスケーリングです。

・歯肉縁下スケーリング

通常、縁下スケーリングといい、歯肉縁より下の歯周ポケット内の歯石や歯垢を取り除くスケーリングです。

歯肉縁上の歯石は、白色または黄白色で、術者が直接見ることができるため、比較的簡単に除去可能です。
歯肉縁下の歯石は、黒褐色で非常に硬く歯根に付着しています。
歯肉の中に潜り込んでいるため、直接見ることができないので、除去するのが困難であり、専門的技術が必要です。


スケーリングは以下のような器具を用いて行います。

超音波スケーラー 超音波スケーラー

超音波スケーラー

超音波と言われる振動によって、水を出しながら歯垢や歯石を取り除きます。
縁上スケーリングはこの超音波スケーラーで行うことがほとんどです。縁下スケーリングにも用いることもあります。
手用スケーラー 手用スケーラー

手用スケーラー

ハンドスケーラーとも言います。超音波スケーラーで取り除ききれない縁下歯石などをかき取ります。先端は刃物になっていますので、痛みを伴うこともよくあり、麻酔をしてから行うこともあります。

[スケーリング例]
スケーリング前 スケーリング後
下の前歯の舌側の写真です。
歯と歯と歯肉の間に歯石がべっとり付着しています
縁上スケーリングを終えたところです。
左の写真と比べると歯と歯の間の隙間があるのがわかります。
この隙間に付着していたものは、全て歯石です。

●ルートプレーニング

ルートプレーニングは主に、手用スケーラーで行います。
縁下スケーリング同様、歯周ポケットの深いところまで手用スケーラーを挿入するため、通常麻酔を使って行います。


歯周外科、再SRP

SRP まで行っても状態が良くない場合や、さらなる改善を目指す場合は、再検査から再SRP や、外科的な処置を行うこともあります。
歯周外科にはフラップ手術、GTR 法、エムドゲイン法などがあります。


定期検診によるメンテナンス

歯周病は生活習慣病の一つで、一度歯垢や歯石を取り除いたことで完治するものではありません。
毎日の生活の中で、歯垢や歯石の付着していない状態を継続し、歯周病が進行しないように維持することが大切ですので、定期的検診でチェックし、クリーニングすることが非常に大切になります。
定期検診の間隔は、その人の口腔内の状況により異なりますが、通常3~6 ヶ月毎の場合が多いです。
歯周病は重度になると特に、治療が非常に難し病気なので、予防が最も大切です。
予防のためには、毎日の歯磨きが最も大切です。ただし、自分でしっかり磨けているかチェックすることは困難です。
歯科医院を上手に利用して定期的にチェックしてもらい、メンテナンスをすることをお勧めします。