Dysphagia 摂食・嚥下

3.摂食・嚥下リハビリテーション

摂食・嚥下障害に対するアプローチは、失われた機能を再獲得すること、もしくは代わりに必要な機能を獲得することになります。
アプローチには、検査・評価を行い、その後状態に応じて、身体を動かす(間接)訓練や食物を使った(直接)訓練、食物形態、調理や栄養管理などの食指導・食支援など多岐にわたり行われます。そのため、医師・看護師・言語聴覚士・理学療法士・作業療法士・栄養士・薬剤師・歯科医師・歯科衛生士・ケアマネージャー・ヘルパーなど多職種の連携が必要不可欠となります。
障害の状況に合わせて、効率よく訓練や支援を行い、目標に向けて継続的に行うことが大切です。


①検査・評価

嚥下器官運動検査

嚥下時に活動する器官の運動状態を確認する。

スクリーニング検査
  • 反復唾液嚥下テスト
    30秒間で唾液を何回嚥下できるかを測定する。3回未満であれば誤嚥の可能性あり。
  • 改訂水飲みテスト
    冷水3mlを嚥下する。その際のムセ、呼吸やかすれ声などを評価する。
  • 段階的フードテスト
    食塊形成と咽頭への移送の機能を3種類(プリン・粥・液状食品)のテストフードで評価する。
精密検査
  • 嚥下造影(VF)
    食塊形成と咽頭への移送の機能を3種類(プリン・粥・液状食品)のテストフードで評価する。
  • 嚥下内視鏡検査(VE)
    鼻からファイバースコープを入れて、嚥下時の食塊の動き、嚥下器官の機能を評価する。VFに比べ、機器が小さいため在宅でも検査を行うことが出来ます。


②間接訓練

飲食物を用いないで行う訓練。摂食嚥下に関連する器官に直接刺激や運動を行うことで各器官の機能を維持・改善させることを目的としています。
障害の状態によって様々な訓練があるが、代表的なものを挙げます。

  • 筋ストレッチ(準備運動)
    首を回す、左右に振る、肩を上下に運動、頬を膨らませ引っ込める、舌を前後左右に出し入れする、パ・タ・カの発音訓練
  • 筋刺激訓練法
    口唇、頬、舌の筋肉を刺激し、筋力の回復・維持、可動域の拡大、運動コントロールの改善を図る。
  • 嚥下促通訓練
    口腔内の感覚機能を高めることで、唾液分泌の促進、嚥下運動を誘発させる。歯肉マッサージや冷圧刺激法などがある。

他にも、声門閉鎖、咳、呼吸訓練や食道入口部の開大などの訓練も行われる。


③直接訓練

飲食物を用いて行う訓練。摂食嚥下の能力を最大限に引き出し、安定した経口摂取方法を確立することを目的として行われます。
障害の状態によって様々な訓練があるが、代表的なものを挙げます。

  • 姿勢
    姿勢が摂食嚥下に及ぼす影響は大きいため、状態に応じた姿勢の維持を訓練する必要がある。
  • 味覚刺激嚥下
    甘味などの味覚によって刺激を与え、嚥下を促す。
  • 手と口の協調運動、一口量の調整
  • ペーシング訓練、捕食訓練
    食物を口へ運ぶ適切なスピードやスプーンなどから口唇を使って食物を取り込む訓練
  • 咀嚼訓練
    前歯で咬み切る訓練、奥歯ですりつぶす訓練
  • 嚥下訓練
    意識化、うなずき嚥下、空嚥下、横向き嚥下などがある。

④食指導・食支援

栄養状態が不良であると、様々な悪影響を及ぼします。摂食嚥下の障害においては機能面だけではなく、どのように食事を行い、適切に栄養を摂取してくかはとても重要です。

  • 栄養状態の評価
    身体検査と病歴、血液検査等で総合的に評価します。
  • 食物形態
    常食、軟食、流動食、刻み食、ミキサー食、介護食など様々な形態があり、状態に適した形態を選択する。
  • 食事の味・香り、温度
    薄味はわかりにくいのではっきりした味が良いが濃すぎるとムセる。常温より少し高いか低い方が嚥下しやすい。温かいものより冷たいものの方が嚥下反射は起きやすいとされています。
  • 食器具の選択
    摂食嚥下の状態は食器具の影響を受けやすいため、基本的に使いやすいものを選択する必要がある。