5.口の成長と歯並び
身体の成長とともに口の中も成長し変化していきます。 口の成長は、上顎骨・下顎骨の成長と永久歯への生え変わりがあげられます。 また、口の成長と歯並びには密接な関係があります。
Ⅰ.身体の成長
一般的に、身体の各組織は各々異なったスピードで成長します。 大まかに言うと、脳に近いところから成長していきます。つまり、脳や神経が先行して成長し、その後、筋肉や骨格が成長していきます。 脳や神経は幼年期に急激に成長し、6,7歳までにその成長のほとんどを完了すると言われています。一方、筋肉、骨格など全身組織は、幼年期のゆっくりした成長と思春期の急激な成長(成長スパート)が特徴とされています。 成長の一般的なパターンは大きくは変わりませんが、成長スパートの時期が変動することにより、個人差が大きく出ます。ある年齢やある体の大きさになったから成長スパートが始まるといった単純なものではありません。 成長スパートの指標として代表的なものに、性的な成熟と思春期成長による身長の伸びが指標としてあげられます。性的な成熟は、女子では初潮の発現が用いられますが、男子では相応する指標がありませんので、身長の伸びを指標としています。 また、成長の量やスパートの時期や継続期間は、その大部分が遺伝的にコントロールされ、先天的に既にある程度決まっているため、後天的にコントロールできる部分はわずかしかないと一般的には考えられています。
Ⅱ.口腔内の成長
1.上顎骨・下顎骨の成長
歯が埋まっている土台の骨を顎骨(ガクコツ)と呼びます。特に、上あごの骨を上顎骨(ジョウガクコツ)、下あごの骨を下顎骨(カガクコツ)と呼びます。 顔の成長は5才までに40~45% 10才ごろまでに80% 20才ごろまでに成長が完了します。最初に顔の幅が成長し、次に顔の長さと深さが成長していきます。 上下の顎の骨は同じ口の中の骨ですが、上顎骨は下顎骨より脳に近い骨であるため、下顎骨に比べ先行して成長するという特徴があります。
上顎骨はいくつかの骨が縫合(骨と骨の接合部)により組み合わさって形成されています。この縫合部に骨ができることにより奥行と幅の成長が起こります。上顎骨は一般的に男女とも小学校低~中学年の時期に成長スパートを迎えます。
下顎骨は身長が大きく伸びる時(いわゆる思春期成長期)に大きくなる手足の骨と同じ種類の骨で、顔面の骨の中で最も大きな骨です。骨全体が大きくなることで奥行と幅の成長が起こります。 下顎骨は、上顎骨に比べ遅く成長スパートを迎え、より遅くまで成長が見込まれます。小学校高学年から中学校には下顎の成長スパートが始まり、思春期が終わるぐらいまで下顎骨が成長すると言われています。つまり、思春期の始まりが遅い男性の方が女性に比べ下顎骨の成長期間が長くなる傾向があります。また、下顎骨は20歳ぐらいまで成長が続くこともあります。
上顎骨の成長方向
下顎骨の成長方向
2.永久歯への生え変わり
Ⅲ.歯並び
歯並びは、顎骨の大きさと歯の幅の合計の相関関係と上下の顎の大きさのバランスで決まります。 例えば
顎の大きさ>歯の幅の合計⇒空隙歯列(すきっ歯)
顎の大きさ<歯の幅の合計⇒叢生(乱杭歯)
上顎の大きさ>下顎の大きさ⇒上顎前突(出っ歯)
上顎の大きさ<下顎の大きさ⇒下顎前突(受け口)となります。
もちろん、これらの症状が重複することもあります。例えば、乱杭歯+出っ歯やすきっ歯+受け口などです。 歯の大きさは、先天的に決まっていて、成長によって歯が大きくなることはありませんが、身体と同じく顎の骨は成長します。この成長を利用して、顎の骨の幅を拡げて歯が並ぶスペースを作ったり、下顎骨の成長を促進させて出っ歯を治したりすることが小児の矯正です。
詳しくはこちら