The Defect 欠損部の治療

4.虫歯の治療

虫歯治療の基本は虫歯を取り除くということです。
基本的には虫歯は自然治癒しないため、虫歯を除去して、歯の代わりになる材料で補うことが必要になります。
虫歯の治療方法はいくつかの種類があります。
どの治療方法を選択するかは

  • 虫歯の深さ(前項のC1~C4)
  • 虫歯の範囲
  • 虫歯のある場所(どの歯なのか、歯のどの面なのか)
  • 患者さんの要望

これらを総合的に判断し歯科医は治療方法を決定しています。

大きく分類すると
C1,C2に対する治療(根の治療が必要ない治療)
C3,C4に対する治療(根の治療が必要な治療)
に分けることができます。
根の治療はいわゆる「神経の治療」です。これを根管治療といいます。
ここではC1,C2に対する治療を説明します。根管治療に関しては根管治療ページを参照してください。

◎C1,C2に対する治療

C2までは虫歯が歯髄まで及んでいない状態ですので、歯髄を残して治療することができます。
C1,C2に対する治療方法としては大きく分けて以下の2つがあります。

  • 直接法(CR:白い詰め物を詰める治療)
  • 間接法(型をとる治療)※型を取ることを「印象」をいます。

このどちらを選ぶかは先述した虫歯の大きさや場所で決まりますが大まかに言うと

  • 虫歯が小さいほどCRになりやすく、大きいほど印象になりやすい。
  • 虫歯のある歯が前であるほどCRになりやすく、奥であるほど印象になりやすい。
  • 虫歯が隣接面を含まないほどCRになりやすく、含むほど印象になりやすい。(CRだと適切なコンタクトの付与が困難なため)

といった傾向になります。
ただし、上記はあくまで目安です。
患者さんの要望や、様々な他の要因、歯科医師の経験・好みによっても変わってきます。
ではそれぞれ詳しく説明していきましょう。

◎直接法(CR:直接白い詰め物を詰める治療)

CR(シーアール;コンポジット レジンの略)という材料を直接詰める治療法です。
ですから正確には「CR充填」といいます。

長所:

1回で治療が終わる。
保険で白い詰め物で治療できる。

短所:

強度があまり強くない。
操作が難しい。
乾燥状態にしないと接着しにくい。(詰められる場所が限られる)
適切なコンタクトの付与がしにくい。

C1最初 前歯の隣接面に虫歯ができてしまった状態です。
c1削り終わり 虫歯を削って除去します。C1では麻酔はしないで済むことが多く、C2は麻酔をすることもあります。虫歯を除去し終わったら、CR専用の接着剤を用いてCRを詰めていきます。CRは詰めたときは軟らかいので、CR専用の光をあてて固めます。
C1完了 詰めたCRを形態修正し、研磨したら終了です。一連の作業を1回の治療で行うことができます。
[CR例1]
虫歯 虫歯(削り終わり) 虫歯(完了)
隣接面の黒ずんでいるところと茶色いところが虫歯です。 虫歯を削り終わった所です。共に近遠心を削っています。 CRを充填し終わって形態修正、研磨が終わって完成したところです。
[CR例2]
CR2 CR2

~ワンポイント~

CRは白い詰め物ですが、同じ白色でも明るさなどが異なる種類があります。
いくつかの種類の中から最も合った色を歯科医が選んで詰めます。
CRはプラスチック(合成樹脂)なので、吸水性を持ち、2~3年位で黄色っぽく変色してくることが多くあります。



◎間接法(型印象をとる治療)

型(印象)を取る治療は大きく分けて二つに分けられます。

1.インレー(歯を部分的に詰める詰め物)

2.クラウン(歯を全周おおうかぶせ物)

これらは虫歯の大きさ、範囲などで使い分けます。


長所:

CRに比べ強度がある。
大きな虫歯にも対応できる。
適切なコンタクトを付与しやすい。
CRに比べ操作がしやすい。

短所:

1回では終わらず基本的に2~3回かかる。
保険だと銀歯になり、白い材料を使う場合は基本的に自費になる。
削る範囲が大きくなる。


1.インレー

インレー 大臼歯の隣接面に虫歯ができてしまった状態です。
インレー2 隣接面の接触をまっすぐ削ってなくします。
この削り方をスライスカットと言います。
インレー3 咬合面に詰め物が外れないように入り組んだ形態を作ります。
形を整えた後は印象をとり、仮のふたをして(仮封)1回目の治療は終わりです。
インレー4 2回目の治療で仮封を外して、出来上がってきた詰め物を専用の接着剤でセットします。
保険の範囲ではいわゆる銀歯になりますが、保険外の材料であれば白い材料でも可能です。

[In例1]

In例1-1 In例1-2
虫歯を削って除去し、歯の形を整えた状態です。この後印象を取り、仮封して、この日の治療は終わりです。 2回目の治療です。保険のInを接着剤であるセメントを用いてセットし終わった状態です。

[In例2]

In例2-1 In例2-2
虫歯を削って除去し、歯の形を整えた状態です。この後印象を取り、仮封して、この日の治療は終わりです。 2回目の治療です。自費のハイブリッドインレーをセメントを用いてセットし終わった状態です。

2.クラウン
クラウン1 大臼歯の広範囲に虫歯ができてしまった状態です。
クラウン2 歯の全周を削り型をとり、仮の歯、もしくは仮のふたをしてこの日は終わりです。クラウンの場合、削る範囲が大きいために、削った刺激で歯髄が炎症を起こし、痛みが出ることもありますので、印象は次にすることもあります。
クラウン3 できてきたかぶせ物を専用の接着剤でセットします。保険の範囲ではいわゆる銀歯になることが多いですが、保険外の材料であれば白いセラミック製のかぶせ物で作ることができます。
クラウン4
[クラウン例1]

クラウン例1-1 クラウン例1-2
虫歯を削って除去し、歯の形を整えた状態です。 保険のクラウン(FCK)をセメントを用いてセットし終わった状態です。
[クラウン例2]

クラウン例2−1 クラウン例2−2
虫歯を削って除去し、歯の形を整えた状態です。 自費のクラウン(オールセラミック)をセメントを用いてセットした状態です。