Orthodontics 矯正歯科

6.保険適用の矯正治療

通常の矯正治療は医療保険の適用外ですが、顎変形症および唇顎口蓋裂等を伴ういくつかの指定の先天性疾患の場合には、矯正治療が医療保険適応となります。ただし、保険が適用できるのは歯科矯正診断/顎口腔機能診断施設の基準を満たし認定を受けた障害者自立支援医療(育成医療・更生医療)の指定機関で治療を受ける場合に限られます。当医院は育成医療・更生医療の指定機関です。


◎顎変形症

顎変形症とは、上下の顎の形や大きさの異常によって起こる、顔の変形や不正咬合を総称したものです。上下の顎の成長や形や大きさは、一部後天的な要素もありますが、ほとんどは遺伝的な要素によるものとされています。とくに下顎の大きさなどは遺伝的な要素が強く、身長が伸びる成長期に、顎の成長に伴って受け口や顔の曲がりが目立ってきます。
顎変形症では、上下の歯の土台である顎の骨の位置がずれているために、通常の矯正治療で行われる歯の移動だけでは正常な咬みあわせをつくるのが難しくなります。そこで矯正治療だけでなく、ずれている土台の顎の骨を正しい位置に移動する顎矯正手術を併用して咬みあわせと同時に上下の顎の骨のバランスも整える治療をおこなう必要があります。
上顎が大きいもしくは下顎が小さい 

上顎が大きいもしくは下顎が小さい

下顎が大きいもしくは上顎が小さい 

下顎が大きいもしくは上顎が小さい

上下顎が非対称

上下顎が非対称

 

顎変形症の治療は、検査・診断、術前矯正治療、顎矯正手術、術後矯正治療、保定の5段階に分かれます。


【検査・診断】
顎変形症の適応であるかどうかの検査を行い、その後診断を行い、治療計画の立案を行います。診断・治療計画の立案の際には、矯正科だけでなく顎矯正手術を担当する口腔外科や形成外科の先生の診断が必要となるため、手術を受ける病院を受診していただきます。
【術前矯正治療】
顎変形症と診断され治療計画が決定した後に、術前矯正治療が始まります。術前矯正治療では、顎矯正手術の前に矯正治療により歯を移動させ、上下顎それぞれの歯ならびを整え、手術をした時に上下の歯がきちんと咬む状態にします。その後、顎を移動させる手術をします。術前矯正治療は1~2年以上を要します。術前矯正の治療の達成度が、顎変形症の治療の質に大きく影響します。
【顎矯正手術】
一般的に術前矯正治療が終了した時点で顎矯正手術が行われます。しかし、手術時期は身体や顎の成長が終了した後でないと手術は行えません。個人差はありますが、一般的に男性では17~19歳、女性では16~18歳以降が手術可能な時期となります。矯正治療を始める時期につては、担当医とよくご相談ください。上下の顎の骨の位置のずれによって、下顎のみ手術を行う場合と上下顎の両方手術を行う場合があります。
下顎のみ手術を行う場合
下顎のみ手術を行う場合
上下顎の両方手術を行う場合
上下顎の両方手術を行う場合

手術は提携した口腔外科や形成外科の担当医によって行われます。入院期間は一般的に10日~2週間程度です。


【術後矯正治療】
手術が終わったあとも、手術後の顎の位置の変化に対応し、上下の歯を緊密に咬み合わせるための治療となります。通常1年程の術後矯正治療が必要となります。
【保定】
矯正治療が終わり矯正装置をはずした後、歯ならびをその位置に落ち着かせる保定治療が必要となります。装置の使用期間は年齢、治療の経過・内容によっても違いますが、最低でも2~3年を必要とします。

◎先天性疾患

以下の疾患は矯正治療が保険適応となります。


  1. 1.唇顎口蓋裂
  2. 2.ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む)
  3. 3.鎖骨・頭蓋骨異形成
  4. 4.クルーゾン症候群
  5. 5.トリーチャーコリンズ症候群
  6. 6.ピエールロバン症候群
  7. 7.ダウン症候群
  8. 8.ラッセルシルバー症候群
  9. 9.ターナー症候群
  10. 10.ベックウィズ・ウィードマン症候群
  11. 11.尖頭合指症
  12. 12.ロンベルグ症候群
  13. 13.先天性ミオパチー
  14. 14.顔面半側肥大症
  15. 15.エリス・ヴァン・クレベルト症候群
  16. 16.軟骨形成不全症
  17. 17.外胚葉異形成症
  18. 18.神経線維腫症
  19. 19.基底細胞母斑症候群
  20. 20.ヌーナン症候群
  21. 21.マルファン症候群
  1. 22.プラダーウィリー症候群
  2. 23.顔面裂
  3. 24.筋ジストロフィー
  4. 25.大理石骨病
  5. 26.色素失調症
  6. 27.口-顔-指症候群
  7. 28.メービウス症候群
  8. 29.カブキ症候群
  9. 30.クリッペル・トレノーネイ・ウェーバー症候群
  10. 31.ウィリアムズ症候群
  11. 32.ビンダー症候群
  12. 33.スティックラー症候群
  13. 34.小舌症
  14. 35.頭蓋骨癒合症
  15. 36.骨形成不全症
  16. 37.口笛顔貌症候群
  17. 38.ルビンスタイン-ティビ症候群
  18. 39.常染色体欠失症候群
  19. 40.ラーセン症候群
  20. 41.濃化異骨症
  21. 42.6歯以上の非症候性部分性無歯症


◎料金

保険が適用された場合の顎変形症の治療費は一般的に術前後の矯正治療と入院・手術費の総額で80~100万円程度です。先天性疾患の場合はその疾患毎に治療が様々ですので担当医にご相談ください。保険適応の矯正治療を受ける場合、高額療養費制度を利用することができます。詳細はこちら


矯正治療は、基本的に自費診療です。


<矯正治療のリスクについて>
・少しずつ顎や歯を動かすため、治療期間が長くなります。
・装置を装着する際に、痛みや圧迫感を感じる場合があります。
・歯並びを整え、咬み合わせを改善するために、健康な歯を抜いた方が良い場合があります。
・歯根の吸収や歯肉の退縮が起こる場合があります。